お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第12回
診断書の記載漏れで障害者等級の誤認定

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

運転免許は「取り消し」

 年が明けて早々に,再び運転免許センターに行き,診断書を提出する.年末にリコールされたICDが正常作動、つまりICDを植え込み後、初めて心室頻拍が起きたからだ。免許センターの担当者からは
「免許取り消しの行政処分が確定するまで1か月程度かかります.処分が確定したら通知しますので,その際に免許証を返納してください」と.
「取り消し? 免停ではないのですか」
「免停は6か月とか,要するに1年未満の処分です.1年以上は『停止』ではなく『取り消し』となります」(※注 2017年9月に制度が変わり,適切な作動後は3か月間の免停ですむようになった)
「え,取り消されちゃうのですか.じゃあ1年が過ぎたら,どうやって免許証を取り戻すのですか.まさかまた教習所にいかなきゃいけないのですか」
「いいえ.免許の更新の時と同じです.診断書を提出してもらいますが,そのほかは視力検査と講習で免許を回復することができます」
「ああ……」

 ほっとして思わず脱力する.「免許取り消し」と言っても単に期間の長い免停のようなものらしい.この年になって教習所だ,路上試験だなんて言われたんじゃ「冗談じゃない」というところだが,どうやらそれはさすがに無いようだ.

 

 

交通違反者のような取り扱い

 運転免許センターにICDが作動したことを示す診断書を出してからおよそ2か月して,ようやく通知が来たと思ったら,そこには「聴聞」という,またしても聞いたことがない単語が書かれていた.しかも水曜日に届いたその通知には,翌週の水曜日の午前9時に運転免許センターへの「出頭」を命じており,昼までかかるという.なんのことだかわからないし,会社勤めをしている人に,有無を言わせずいきなり一週間後,半日休みをとってこいというのはいかにも乱暴ではないか.早速運転免許センターに電話をする.すると担当者は
「聴聞というのは処分を確定する前に,ご本人にいわば釈明の場を提供し,それを踏まえて最終的な判断を下すためのプロセスです」
「それって私の場合も必要なのでしょうか.診断書がすべてで,私の場合はICDが作動したという事実は釈明するとかしないとかいう類の話ではないと思いますが.どういう場所で行われるのですか」
「センターの一室で,前に係官がいて,ひとりひとりお話を聞きます」
「それって個室ですか」
「いえ,順番をまっている人は後ろの席に控えています」
なんだかお奉行様の前に罪人が呼び出されるお白州のようなイメージがしてきて,だんだん腹が立ってくる.
「私はスピード違反とか,何か交通規則に違反することをやったわけではありません.病気になっただけです.しかも病気は最も重要なプライバシーですが,それを他人の聞こえるところで,話せというのですか」
「いやあの,事情があれば,個室で対応させていただくことも考えます」
担当官も慎重に言葉を選んでいる気配が感じられる.
「ですけど,聴聞の結果,処分が変わることは私の場合あり得るのですか」
一瞬の沈黙.そして
「はっきり申しまして,あなたの場合は処分が変わることはないと思います」
「じゃあ何のために行くのですか.しかも平日の半日をまるまるつぶして.何も違反も悪いこともしていない.しかも行っても何も変わらない.行く意味がないじゃないですか.私は処分自体に不満があるとか承服できないとかいうのではないです.むしろ早く処分を確定してほしい.診断書を出してから2か月たっているのです.これから処分確定して1年間となると実質的な免停期間は1年2か月と同じことです.では聴聞に出席しないとどうなるのですか.なにかさらにペナルティーがつくのですか」
「いやそれはありません」
「では私は聴聞を欠席させて頂きます.聴聞抜きで処分を確定して頂くことを希望します」と答え,その週末の日曜日に免許センターで免許書を返納し,処分の書類をもらった.

 その後サイボーグ父さんに心室頻拍が再発することはなく,会社で通常のオフィスワークに従事.運転免許書も取り消しからさらに1年を経て,無事に取り戻すことができた.

 

 

診断書の記載漏れで障害者等級を誤認定

 ICDの正常作動は,障害者等級の再認定でも役所との間でトラブルになった.ICDを植え込んで3年が経過すると,障害者手帳の等級の再認定を受ける必要がある.病院の診断書を添えて,サイボーグ父さんは役所に再認定の書類を提出した.植え込み後,一度ICDが作動しているので,障害者の等級は1級のままのはずだった.

 ところが結果は3級という通知.役所に問い合わせると,診断書に「1級に相当」と書いてはあったが,「ICDが作動した」という記載がなかったため,医師に確認のうえ3級に認定したということだが,そうした経緯はサイボーグ父さんの知るところではない.なぜ医師がICDの作動の事実を書き込まず,3級に修正したのかも不明だ.

 

 

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このため役所の担当者に,「ICDが作動した事実があり,ICD手帳の記録や,改めて医師に確認してもらえれば証明ができるので,修正してほしい」と申し入れたが,役所は「修正はできない.改めて医師に『ICDの作動があった』旨を明記した診断書を書いてもらい,等級変更の申請を出し直すように」とのこと.
その通りにした結果,等級は3級から1級に変更されたが,これでは一定期間3級であったことになる.1級と3級では給料の所得税の扱いや,会社にとっては障害者の雇用者数(1級は2人を雇用しているカウントになるが,3級は1人とカウントされる)が異なっており,このままでは事実と異なる状況が短期間とはいえ固定されてしまう.サイボーグ父さんの会社の総務や経理,その向こうにいる税務署や厚生労働省にも誤った事実とそれによる誤認定が波及する.どうしても納得がいかない.