お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第1回
心室頻拍の再発

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

この連載は,2人の子供を持つ50代の会社員が致死性の不整脈「心室頻拍」を発症し,①カテーテル・アブレーション,②セカンドオピニオン,③ICDの植え込み,④ICDのリコール,⑤心室頻拍再発とICDの正常作動,⑥診断書の記載漏れで障害者等級の誤認定―――などを通じ,患者として感じた不安と疑問.それを取り巻く医療や福祉制度とその限界などの一断面を「患者目線」でまとめたものです.とくに医療機器の進化・IT化で従来の医師や看護師などの医療スタッフに加え,技師や機器メーカーの方々にも直接患者はお世話になります.裏を返せば患者が体験するプロセスやその注意点等の全てを,誰か1人だけで患者や家族に説明することは難しいのだと感じました.医療スタッフや関係する役所等の指導・説明を,まず患者が自分なりに「消化」すること.その上で発症から手術,職場への復帰などの各段階で,自分の状態や心配なことを伝え,確認をしなければなりません.さもないと適切な措置やサポート受けられないこともあるかと思います.「患者道」とは患者として体験してきた道のりと,前向きに歩んでゆくための「心構え」という意味をこめました.

 

 

心室頻拍の再発

 それはまるで「パチン」とスイッチが入ったような,そんな突然のことだった.初夏の早朝,出勤前の寝室.上体を起し,雑誌に目を通していたら,左胸の上のほうが,突っ張るような感じがして,すぐに息苦しくなってきた.「心室頻拍」の再発したのか?

 「心室頻拍」とは,心臓が猛烈な勢いで暴走をはじめる不整脈の一種.最初に発症したのは2年前だった.心拍数は通常1分間に60〜80回のところ200回近くに達していた.心拍数が急増する分だけ,心臓の筋肉が十分に収縮しなくなる.その結果,血液を全身に送り出す「ポンプ」の機能が低下.脳に血液とそれに含まれる酸素が充分に届かなくなり,突然意識を失う.最悪の場合は死に至る.いわゆる「突然死」のパターンだ.現在でも原因はわかっていない.治す薬もない.蘇生しても脳に障害が起きて,植物状態になるおそれもある.

 前回の入院とその後読みあさった心臓病に関する本では,「左胸の上の方が突っ張る感じがする」というのは,どちらかというと心筋梗塞の兆候だった気がする.息苦しさは収まらず,むしろ強くなっている.意識のあるうちに,なんとかリビングに移動し,部屋の隅に置いてある家庭用の血圧計で血圧と心拍数を測る.あわてているのと息苦しいのでうまく腕のまわりに血圧計のシートを装着できない.データがエラーに.登校前の娘に手伝ってもらいやり直す.血圧は上が77で下が40.脈拍は177.間違いない.

 かかりつけの病院に連絡すると「救急車を呼んですぐに病院に来るように」との指示が来た.早速119番で救急車を依頼する.ところがすぐに来た割には,なかなか救急車は発車しない.改めて救急車から病院に受け入れの確認をしている.

 7〜8分も待っただろうか.ようやく救急車が走り出す.

 

 

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心筋梗塞のような初期の自覚症状。2年前は効いた薬は、今回効果がなく電気ショックで頻拍を止める

 

 

 「発車しました.意識は清明です」と救急隊員の声.

 座席に比べればはるかに硬いストレッチャーに寝かされた状態だと,道路の振動はいやでも体に伝わる.やがて吐き気を催してきた.

 「吐き気が……」

 かろうじて救急隊員に告げるとすぐにビニールの袋が口に当てられた.ただ吐き気はあっても早朝で,しかも食事の前.胃の中はたぶん空っぽだったのだろう.胃液のようなものが若干でただけで,息苦しいままの状態が続く.