国際化社会と看護
- 第3回
- 排泄習慣の違い①
小笠原 広実 Hiromi Ogasawara
医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)
日本のトイレの様式はどんどん変化を遂げています.汲み取り式の“便所”で,バキュームカーが排泄物の回収に来ていた時代は,遠い昔になってしまいました.昔はトイレは“くさい”のが当たり前の時代でした.バキュームカーの担当者が,排泄物の独特のにおいで,その家に糖尿病の人がいるのを発見した,なんていう話もありました.
第1回と第2回で,国の違いによる異文化の話をしてきましたが,同じ日本の中にも,育った時代の違い,という異文化があるのかもしれませんね.和式トイレも減ってきて,洋式,それもウォシュレットや冬も温かい便座が主流になりました.ドアを開けるとトイレのふたが自動で開閉する,なんていうトイレも増えています.
インドネシアの排泄習慣
インドネシアでも,以前は川の上に板を渡して,その隙間から排泄する小屋を見かけたものでしたが,最近では首都のジャカルタ近辺では見かけなくなりました.都市部では,日本と同じく洋式トイレが増えています.
しかし,インドネシアでは昔から排泄の後,紙で拭くのではなく水で洗い流す習慣があることが日本との大きな違いです.そのためトイレの中には水を貯めたバケツが置いてあります.それを桶(日本ではお風呂で使う手桶です)で汲み取り,陰部に水をかけて,左手で洗う(らしい)のです.残念ながら人がしているのを見たことはありません.
イスラムでは,お祈りの前に身を清める(マンディといいます)のですが,トイレの中でこれを行うこともあり,以前はたいていトイレの床や便座は水びたしでした.しかし,都心のショッピングモールや国際空港内のトイレではこれもなくなり,日本人としてはとても助かっています.
なお,イスラム教では左手でものを渡したりしないという習慣も,左手は排泄の際に使う手だからと聞いています.