お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第18回
「切れるリスク」と「抜き替えるリスク」~ICDの交換を前に~

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

「自覚症状」はあてになるか?

 ICDを定期点検する「ペースメーカー外来」で,いつもの病院を訪れる.患者としては今回2つの点を,医師や技師さんに確認しようと思っている.一つは心房細動に対する「自覚症状」の確認.もう一つはICDの電池があとどれくらい持ちそうで,いつ頃ICDの入れ替えの手術を考えたら良いのかという点だ.ICDを植え込んですでに6年半.「サイボーグ父さん」も確実にヴァージョンアップを迫られる時期が近づいている.

 前回の診断の時は,その直前4か月間は心房細動が出ていないということだった.ところがその後,定年退職・再雇用後にも関わらず,仕事が結構忙しくて,「心房細動が起きているのではないか」と疑念を起こさせるような息苦しさを感じることがあった.ただそうした時に家庭用の血圧計で血圧と脈拍数を測ったところ,異常はなく,この「自覚症状」?はどこまであてになるのか,ならないのか.

 以前にも息苦しさを感じて,急きょ仕事を休んで病院に行ったことがあるが,この時も病院に行く前に自分で測った血圧と脈拍は異常なし.病院での検査も結果的には全く異常なしで,半日を無駄に過ごした感じだった.その時に医師からは今後のために「息苦しさを感じた長さと日時を記録しておくほうが良い」というアドバイスをもらっていた.

 今回はそのアドバイスを生かして自分が感じた日時の記録をもとに,技師さんによるICDのチェックの際に聞いてみた.

 「今回は,心房細動は出ていましたか?」

 すると,出ているという答えだったので,こちらは

 「〇月×日でしょうか」と畳みかけてみた.ところが答えは違った.サイボーグ父さんが「自覚症状」を感じた日時ではなく,それをはさんで前後数日の間に2回出ているというものだった.どうやらサイボーグ父さんの場合は,心房細動を「自覚」できていないようだ.それだけ深刻ではないという面もある.このため異常を感じたと思っても,まずは自分でできる血圧や脈拍数のチェックと,どうしても気になるようならば,やはり病院で確認するしかないということか.

 その後の医師の検診でも,心房細動はこれまで通り「経過観察」という程度で,よほど頻度が増すなどの変化がない限り,カテーテル・アブレーションなどの措置は必要ないということだった.

 

 

電池の消耗は「気まぐれ」

 ICDの寿命はというと,今回は一番短い場合で,あと1.6年.4か月前は1.8年と言われた.ペースメーカー外来はサイボーグ父さんの場合は4か月ごとなのだが,ここのところ4か月で0.2年(2.4か月)寿命が短くなるというペースで歩んでいる.ただ今後ショック作動の有無によっても寿命は変わるし,電池の残量が少なくなると消耗のペースが上がることもあるというので,そのあたりを踏まえて交換の時期を探ることになる.医師によると

「お仕事などのご都合で早めに入れ替えるという場合もあります」

とのことだった.今は定年を過ぎて再雇用.1年契約で更新していく立場なので,更新時期には当然健康状態の確認がある.できればその更新時期の前後は避けておきたいというのが偽らざるところだ.1年後くらいで,仕事やプライベートの予定を見ながら交換の時期が近づいたら改めて医師と相談することになるだろう.

 

 

本体は交換,リードは大丈夫?

 ICDを交換するとなると,本体はもちろんだが,ICD本体から伸びる「リード」という電気ショックなどを心臓に伝えるコードをどうするのか.リードに問題がなく,新しいICD本体でも使用することができれば,最初にICDを植え込んだ手術に比べ,手術時間が短くてすむ.「一般的には手術が終わるまでおよそ1〜2時間程度」(一般社団法人 日本不整脈デバイス工業会「ICDのはなし」).だがリードは次の2つの観点から,考える必要がある.一つはMRI(磁気共鳴画像)検査対応,もう一つはリードの断裂のリスクだ.

 現在サイボーグ父さんの体に植え込まれているICDはMRI検査には対応していない.この点は導入時に医師などとも相談(第5回「患者自身がICDを選ぶ」参照)したが,その当時はMRI対応の機器は出始めで,医師からは「MRIが必要になるかどうかというのは,今後あなたがどんな病気にかかるのか次第ですが,それは予測できません」ということだった.結局ICD本体の大きさや遠隔モニタリングへの対応などを考慮して現在の非対応の本体に決めた.

 

 

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 現在はMRI対応や条件付きMRI対応の本体やリードも出ており,サイボーグ父さんも先々MRI検査を受けられるようにするには本体だけでなくリードも対応したものに揃える必要がある.

 ただ医療や健康に関する米国の情報サイト「HealthDayNews」は,条件付きMRI対応ですらない,古いICDやペースメーカーでも特別な手順を踏めば,安全に実施できたとする米国での研究結果を2020年10月に伝えている.

 これが日本の,しかもサイボーグ父さんのケースにあてはまるのかどうかということは,現段階ではまだまだ全く何とも言えないだろう.実際にサイボーグ父さんがICDを入れ替える時期までに,明らかになることは期待したいが,現実的には難しいのではないか.そうであればやはりMRIを受けられるようにするには,リードの交換も前提とならざるを得ないのではないか.