お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第14回
遠隔モニタリングのお値段(診療報酬)は?

サイボーグ父さん(50代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

外来で,「暗号化」のための更新

 かかりつけの病院にはICDの状況を点検する外来(ペースメーカー外来とよんでいる)をサイボーグ父さんの場合は4か月に1回のペースで行っている.医師の診断の前にまず病院の技師とメーカーの担当者によるICDのチェックがあったが,この日は,ちょっと違っていた.メーカーの担当者が

 「ICDのソフトのアップデートをします」

 という説明で,1分程度だが,ICDに何かを読み込ませているような感じだった.以前,患者の会のサイトに,ペースメーカーやICDのセキュリティに関する記事が紹介されていたことを覚えていたので,メーカーの担当者に聞いてみた.

「これってICDの暗号化か何かですか」

「そうです.念のためにですが」

 確かに,ICDは超小型コンピューターを搭載しているようなものだし,無線で1日1回メーカーのサーバーにデータを送り,遠隔モニタリングを可能にしている.別に医療機器でなくても,ハッキングの防止などのためのセキュリティ・アップデートは,製造からある程度の期間が経過すれば,その間に得られたセキュリティに関する知見や情報をもとに,必要不可欠だろう.この後の医師の診察の際にも聞いてみたが,これに関しては詳しい説明はなかった.

 

 

メーカーのホームページに説明文

 そこでメーカーサイドは何か説明するものを,ウェブサイトなどで出していないか,自分で調べてみた.サイボーグ父さんのICDは外国メーカーのモノなので,本社のサイトを探すと,確かに該当する患者向けの説明文などがあった.インターネットの自動翻訳は翻訳結果を鵜呑みにできないし,専門的なものだと奇妙な日本語になるが,原文と突き合わせるとなんとか大意をとることはできる.セキュリティのアップデートは,ICD本体に関するケースもあれば,遠隔モニタリングのための通信機器が対象となるケースもある.今回のように外来の際に行うものもあれば,通信の際に自動で行われるものもあるようだ.

 そしてそこでは医療機器の性格上,高度の信頼性が求められることから,日本でいえば厚生労働省にあたるような監督機関との連携なども強調してあった.

 それならばということで,監督機関のホームページも見てみると,サイバーセキュリティの観点から必要な指摘や確認を行っていることが記載されていた.実際にこれで患者に何か問題が生じたという報告はないことや,セキュリティ・アップデートがサイバーセキュリティのリスクを軽減することなどのようだった.

 

 

遠隔モニタリングの保険の点数がいきなり5倍以上に

 さてその遠隔モニタリングだが,サイボーグ父さんも実際に恩恵に浴している.ところがこのセキュリティ・アップデートが行われた時の外来の会計で,前回に比べ,診療費が高くなっていることに気がついた.セキュリティ・アップデートをしたせいなのか,それとも何かの計算違いなのだろうか.帰宅後,以前の診療明細書の金額を確認した上で,電話で改めて会計の窓口の担当者に聞いてみた.

「前回(のペースメーカー外来)に比べて随分高いのですが,なぜですか」

 電話口の担当者はすぐにはわからず,「確認します」ということになり,しばらく待つと

「確認したところ2018年に診療報酬の改定が行われて,遠隔モニタリング加算が,これまでの月60点から320点に引き上げられたためです」

 との答えだった.診療報酬といういわば「医療の価格」は,厚生労働省が決めるもので,公のプロセスを経て決定されることはサイボーグ父さんも何となく知っている.しかし遠隔モニタリング加算が,いつ,しかもなぜ一気に5倍以上も上がったのか,その事情は全く知らなかった.

 

 

father13

 

 

妊婦加算は報じられていたが……

 妊婦さんの外来診療に対し,「胎児への影響や妊婦にとって頻度の高い合併症などに配慮した診察が必要である」という理由で2018年の診療報酬改定で導入された「妊婦加算」は,世論の反発を受けて,凍結に追い込まれた.十分な説明がなかったことや,コンタクトレンズの処方など,妊婦でない患者と同様の診察を行う場合にも加算するなど,制度の趣旨に反するような事例の指摘があったためだ.こちらは少子化の時代に妊婦の負担を増やすものとしてマスコミやネットなどで盛んに取り上げられたため,こうした加算が行われたことは,広く世の中に知れ渡った.

 これに対し「遠隔モニタリング加算」というのは,心臓のペースメーカーやICDを植込んでいる人が対象なので,世の中全体から見れば,注目度は比較にならない.世間が注目しなくても,診療報酬という公で決める「医療の価格」なので,少なくとも所管の厚生労働省は医師会や医療関係者,製薬メーカーだけでなく,「ユーザー」である患者向けにどのような告知をしていたのだろうか?