今知りたい医療・看護のこと
- 第3回
- 看護学生と勉強①
勉強が嫌いでも 大丈夫…?
勉強が嫌いでも 大丈夫…?
成瀬 昂 Takashi Naruse
岩本 大希 Taiki Iwamoto
なんで勉強しないといけないの?
もし,勉強なんか嫌いだ,できるだけしたくない,という人がいたとしても,それはそれでいいんじゃないですか.効率よく最低限の単位を取って,最低限の学費で,資格を取るというのも1つのやりかたですし.空いた時間は遊びやほかの経験にめいっぱい使うのもいいじゃないか,と. | |
極論ですね. | |
そうですね.でも,そういう人もいたほうが,集団として自然ですよね.看護の業界も,活性化するんじゃないかなぁ.僕も,机に向かって「勉強するぞ」ってタイプではなかったですし. 学生のみなさんにまず伝えたいのは,勉強が嫌いだと思っていても,自分を否定しなくてもいい,それでいいんだよ,ということです.変な話ですが,「勉強しなきゃいけないこと」だと認識しているうちは,それを好きになるってなかなか難しいことじゃないかなと思います. 周りには学生時代も,看護師になってからもいっぱい勉強している人がいて,はたからみて「まじめだな,偉いな,自分はそんなに頑張れないよなぁ」って思うこともあるかと思います.でも実はあれ,本人は「まじめにめちゃくちゃ勉強している」つもりなんてないんじゃないかと思うんです.臨床に出ると,自然と「あ,もっと知りたい」と思うような対象がどんどん出てくるから,それをただ調べているだけなんじゃないかと. 「勉強が嫌いだ」と思うのは,興味がないことを,テストで合格するためや,先生や先輩に怒られないようするために,必死に覚えるからじゃないですか? 勉強をしているように見える人がみんな,まじめで人格者で看護に情熱を持っている,と色眼鏡で見ないように,まず考えたほうがいいでしょうね. |
学校と臨床の勉強は違う
確かに,就職してからのほうが学ぶことがそのままスキルアップにつながるから,学んだり覚えたりすることが好きになったという看護師は多い気がします. 学校で学ぶことは資格教育の規則で決められているので,それをこなさなければ看護師になれないというのは大前提.看護師として社会で活動するためには最低ラインはやりましょうということなのでしょう.臨床の管理者の立場からすれば,成績は問いません. ちなみに僕は大学院の在宅看護の専門看護師教育課程に通いたいと思っているのですが,そのために学生時代の成績証明書が必要だったので確認したら,在宅看護論と在宅看護の実習とかがC評価だったんです.ほかの科目は普通によかったし,在宅看護もその時点ですでに興味はあったんですけど全然できていなかったみたいで. | |
成績の優劣は,その後のキャリアや将来に直接はかかわらない気がします.まずは,最低限求められている知識を身につけて,テストに合格することが一番です. また学生時代と臨床の学びの違いとして,臨床に出てからは同じ90分の授業を聞くにしても,その知識をどう活かすか考えながら聞いてるから,情報を取捨選択できるのではないかと思います.だから,「あ,これはこう使えるな」「こういう言い回しをするといいんだな」「この制度がこう変わったから,あの患者さんはこうなるな」とか,使い方を自分から想像して,欲しい情報を効率的に整理しながら吸収できるんでしょうね.学生のみなさんでも,看護実習を終了した後で,1年生のときの看護の授業をもう一度受けてみると,やっぱり聞き方が違うんじゃないかなぁ. |
そうですね.やっぱり臨床に出てからは問題解決のために勉強しようという動機があり,そのために何か必要なものを積極的にとりにいくというか. | |
学生の立場だと,まだ知識の使い方が想像しにくいので,目の前にある情報の全てを丸暗記しないといけないという印象になる.やっぱり,それは嫌になりますよ.情報におぼれてしまっても,仕方ないのではないでしょうか. |
学生時代は学びのトレーニング期間
基礎教育では授業数も多いし,勉強量も多いと思いますが,それは変えられません. | |
でも,強制的であってもいろんな分野に触れるので,関心のあることを見つけるチャンスは多いですよね. | |
はい.「興味を持てない授業だけどいったん聞いてみるか」くらいの気持ちでもいいんです.でも勉強しなかったことを,授業がつまらなかったせいにすることはできません.臨床に出たら,知らなくて恥ずかしいことも出てきますが,そのときに教え方が悪かったと言って開き直ってはだめです.さっきは,情報が多くて大変だから嫌いでも仕方ないよ,と言いましたが,それは「勉強しなくていい」と言っているのではありません.卒業時に自分がどんな風になっていたくて,そのために何をすればいいか,もし勉強を好きになり励みたいならどうすべきか,考えて動きましょう. みなさんはもう十分大人ですから,自分の行動,つまり勉強に対する1つ1つの取り組みや態度も含め,全て自分で責任を負うものですからね. |
3年,4年,という長い期間,1つのことを学び,資格を取るという,これほど集中するときはあまりないので,学生時代を「トレーニングを受けている」という気持ちでやるのもいいかもしれません.看護だけではなく,勉強のしかたも学ぶので,今後いろんなことに役立てられると思います. | |
「なんで勉強しなきゃいけないか」の答えを出そう
今の学校での勉強は国試が目的なわけではないですよね? | |
国試なんて通り道だと思っている人は立派な心がけだし,国試のために勉強するのでも別にいいんじゃないかと思います. | |
最終学年ではとくに,国試のためにたくさん勉強しますしね.どうあがいたって国試はやってくるので,「頑張れ!」と思います. |
では,国試のために勉強した内容は臨床でやっぱり役に立ちますか? | |
役に立つかどうか,というか……,国試で問われる内容の知識もなく臨床に出るなんて,息継ぎのしかたを知らずに水中を泳ごうとするみたいなものじゃないでしょうか.それができて,初めてスタートできるのですから. | |
でも,受かることが重要です.たとえ点数がぎりぎりでも立派に看護師をしている人がたくさんいるので大丈夫です. |
なんで勉強しなきゃいけないかということへの僕の答えは,「なんで勉強しなきゃいけないか,ちゃんと自分なりに答えを出すことから始めたらいいんじゃないかな?」ということです.しなくていいと思うんだったら,別にそれで突き進むも良し.なんで勉強しなきゃいけないのかって,先生に聞いたら説明してくれるし,たぶん先輩も,看護師さんも,僕らも聞かれれば,それぞれの私見は述べるけど,今のうちに自分なりの理由づけをしておくのが一番大事だと思います.どんな事情があったとしても,看護学生になる・続けるという選択は,あなた自身が決めたことなんだから. |