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サイボーグ父さんの『患者道』

第13回
心房細動を併発 ICDが誤作動

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

心房細動を併発

 かかりつけの病院には,ペースメーカー外来で4か月に1回,それとは別に2か月に1回の定期検診をうけているが,ICDを植込んだ半年後の検診で,心室頻拍とは別に心房細動があることがわかった.心房細動は,心房が小刻みに動き,けいれんするような病状を示す.恐ろしいのは心房に血栓ができやすくなり,その血栓が脳に飛んで脳の血管が詰まる,つまり脳梗塞を引き起こすことだ.

 脳梗塞の発症リスクを測る指針として「CHADS2スコア」というものがあり,①心不全②高血圧③年齢が75歳以上④糖尿病⑤脳梗塞,一過性脳虚血発作の既往―――を点数化するものという説明を受けた.サイボーグ父さんは少なくともこの段階ではスコアは0なので,「血栓をできにくくするための抗凝固薬の服用は不要でしょう」というのが医師の診断だった.それから数年間は定期的に受ける検診で,心房細動が認められることはあったが,とくに問題は起きなかった.

 

 

ICDが誤作動

 ところがある夏の平日の午前中,いつものようにかかりつけの病院で,血液検査と心電図をとって,医師の検診を受けたところ,また心房細動が出ていることがわかった.このため心拍が早くなるのを防ぐ薬を現在の1日1回就寝前の服用から,朝晩の2回に増やすことになった.ただ血圧を下げる効果があるので,ふらつきが出るようなら見直すということだった.

 昼前にいったん帰宅.その後買い物に行くことにしたが,病院が混んでいて時間が思ったよりもかかったため,当初考えていた時間によりも大幅に遅れている.ICDは植込んでから数年を経て,周りの血管や細胞がICDに絡みついており,走ってもそれほど違和感はなくなっている.そこで駅までしばらくぶりに走ってみた.改札をくぐり階段を上がり,ホームのクーラーの効いた待合室に飛び込んだところ,なんとこの瞬間に左胸にドーンという衝撃.ICDが作動した.びっくりして,先ほど検診を終えてきたばかりの病院に電話する.医師にICDが作動したことと,現在の体調はとくにおかしなことは本人としては感じていないことを説明したが,当然検査のためにもう1回,病院に来るようにということになった.

 

 

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 通常の外来の窓口ではなく,救急用の窓口で名前を告げると,医師から話が通っていたので,すぐに検査が始まる.採血,心電図,ICDのチェックなどのフルコース.院内を移動せずに救急患者用のベッドで,必要な機械は看護師が持ち込んで,次々と「点検作業」が進む.担当したのは救急の当番の医師.サイボーグ父さんの主治医に電話で検査の結果をフィードバックしていた.こちらはといえば,ICDが作動するとまったく普通の状態に戻っているので,電話が終わるのを待って,尋ねる.

 「今回の作動は心室頻拍が起きたことによる正常作動なのですか.それとも何らかの誤作動なのでしょうか」

 心室頻拍が起きたことによる正常作動だとすると,3級になった障害者手帳の等級は再び1級に戻り,自動車は少なくとも3か月間(2017年にそれまでの1年間から短縮された)は運転できなくなる.そのための役所や会社での手続きを考えると,確認せずにはいられない.

 

 

誤作動の原因は心房細動

 「誤作動です.主治医の先生やメーカーにも確認しましたが,心房細動が出ていたところで走ったので,心拍数が急に上がり,機械は心室頻拍が起きたのと勘違いして作動したようです」

 どうやら面倒くさいことにはならずに済んだようで,ほっと胸をなでおろした.その1週間後に経過をみるために主治医の診察を受けたが,その時の主治医の説明によると,ICDの誤作動の半分以上は心房細動によるもの.心房細動に伴う心房の震えが心室に波及して心室も震え始めて誤作動がおきるというものだった.

 サイボーグ父さんの知り合いには心房細動の治療のためにカテーテルアブレーションを受けた人がいたので,その必要はないのかを尋ねた.しかし医師は
 「まだそこまでする必要はないかと思います.アブレーションはできなくはありませんが,ICDのリードの入った血管を傷つけたり,ひっぱってリードが動いたりするリスクがあります.ただリードはすでに数年たって,血管に癒着しているのでそうそう動かないとは思われますが」
 ということで,心房細動だけの患者より,アブレーションのリスクが大きいのは事実のようだ.