お役立ち満載

看護教員がおくるリレーエッセイ

第10回
きらきらナース

瀬戸 奈津子 Natsuko Seto

関西医科大学看護学部設置準備室 教授

2016年3月で,看護基礎教育に携わり8年.成人看護学実習として,周手術期にはじまり,慢性期まで計6つの病棟,延べ300名以上の学生指導を担当させてもらいました.

 

実習では,教員1人で2病棟10名程度の学生を受け持ちますが,学生たちは,指導者さんをはじめ,師長さん,受け持ち患者さんを担当するプライマリーナース,日々の受け持ち看護師さんなどなど,多くの方々から貴重な指導をいただいています.みなさんからの,専門職としての後輩育成という観点からの指導がなくては,実習が成り立ちません.

 

今回は,臨地で出会った素敵な看護師の方々のエピソードを書いてみようと思います.

 

 

管理者として頼りがいのある師長さん

このエッセイでも2度ほど書かせていただいたA師長さんからは,カンファレンスでいつも魂が揺さぶられるコメントをいただきます.胸が一杯になり,感極まって泣き出す学生も少なくありません.

 

学生が,進行がんの患者さんが治療の継続の有無を決定しなければならない場面に立ち会い,「患者さんには決断する力がある」とアセスメントをしました.するとA師長さんは「『力がある』ということ自体,患者さんを弱者とみていませんか?」と問いかけ,私もドキッとしました.患者さん主体の,揺るぎない看護観を持ち,実践者としても素晴らしい方です.

 

A師長さんはめまぐるしい病棟管理の中,カンファレンス以外でも学生の様子をよく見てくださいます.学生の表情の些細(ささい)な変化をとらえて指摘してくださり,大事に至らなかったケースもあります.

 

ある学生は,17歳で思春期の潰瘍性大腸炎の患者さんを受け持ち,思うように実習の進展がみられませんでしたが,A師長さんは,「『将来の患者さんを見てみたい』と言っただけで充分よ」と,学生が看護の原点をつかんだことを支持してくれました.

 

そして,常に「多少の失敗は責任取るからチャレンジするように」と,学生たちの背中を押してくださいます.本当に頼もしく,ありがたい存在です.

 

2年前に着任されたB師長さんは,毎朝病棟の患者さん全員を回ります.入退院を繰り返している患者さんが「師長さんは毎朝来てくれる.変わりないのが申し訳ないくらいだけど,ホント嬉しいね」と言います.

 

また,B師長さんは実習終了の挨拶時,必ず私に「ありがとうございました」と言ってくださいます.学生がご指導いただいているのに,「学生から学んでいる」というスタンスで,病棟全体の教育的環境を整えてくださり,学生たちはのびのびと実習しています.看護管理に関心がある私は,尊敬の念で一杯です.