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サイボーグ父さんの『患者道』

第18回
「切れるリスク」と「抜き替えるリスク」~ICDの交換を前に~

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

リードの断裂と抜去のリスク

 リードの寿命も「その種類,植え込まれた部位や状態など,さまざまな条件によって異なり(中略)一概に何年とはいえません.リードは,まれに早期に損傷する可能性があります」(一般社団法人 日本不整脈デバイス工業会「ICDのはなし」)ということで,実際にICD患者向けの講演会でリードに不具合が生じ,別の血管から新しいリードを入れ直したという体験談を伺ったこともある.また「エキシマレーザー」というレーザー光線を使い,リードを抜去して入れ直した(第16回「どっちが早い? ICDの電池切れと定年退職」参照)という話も.ペースメーカーと異なり,ショック作動をかけるICDのリードは相対的に傷みやすい面があるという.

 自分のこととして改めて考え直すと,実はこれは非常に悩ましい話だ.リードを長く使うほどリードの断裂などの不具合の発生するリスクは上がり,かつリードが血管に癒着するので抜去することの難しさが増すが,リードに問題がない限りICDの交換手術の負担は相対的に少なくてすむ.

 一方早めに,例えば次のICDの交換の際に合わせてリードを抜去し,MRI対応に本体もリードも揃えるとすると,リードを抜去することの難しさは相対的に低いが手術時間は長くなる.抜去のリスク自体もなくなるわけではない.しかも確認するとサイボーグ父さんの場合は通っている病院がリードの抜去を今のところ行ってはおらず,それをやろうとすると対応している病院を紹介してもらい,そちらで手術を受ける必要が出てくる.リード抜去を手掛ける病院は全国でも限られている.

 現在植え込んでいるリードを使い続けるか,抜去して交換するかはそれぞれにメリット,デメリットがある.以前参加したICD患者向けの講演会で,「以前は「目の前の状況をいかに乗り切るか」でデバイス選択してきましたが,現在は10年後20年後の状態を考えてデバイスを選択する必要があります」という登壇した医師の言葉は,非常に印象に残った.現在の年齢がよほどの高齢になっているなら別かもしれないが,60歳だとすると10年後20年後はきちんと考える必要はある.もちろん主治医の説明,提案はあるだろうが,しかし我が身の「10年後20年後の状態」など正直想像の域を出ないと少なくとも自分は思う.となればそれぞれの方法のメリットデメリットを理解した上で,患者自身が相応の覚悟を持って選択せざるを得ないということか.