サイボーグ父さんの『患者道』
- 第17回
- コロナ禍で迎えた定年
サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.
病院は空いていたが
いつもの定期検診だが,降ってわいたようなコロナ禍.そんな中,サイボーグ父さんはサラリーマンを定年退職する60代に突入.かつ心臓に不整脈の持病があるという,コロナが重症化する要素を兼ね備えている.正直,「行きたくないなあ」と思うがそうはいかない.テレビでは,ある医師が「コロナも心配だが,高齢者が必要な検診を受けずに症状が悪化することも心配.まずは主治医に相談を」と警鐘を鳴らしていた.
そこで定期検診の延期が可能かを相談しようと,何回か病院に電話をかけたが,いつも話し中でつながらない.結局,予約が入っている日時の通り病院へ.外出自粛,院内感染に対する恐怖から見事に病院はガラガラだった.さすがに今日は待ち時間が短いと思いきや,そうはいかなかった.診察の順番を告げる受付番号の表示が進むペースにさして変わりはない.予約を入れて定期検診を受ける人は,みなさんおいでになっているようだ.
診療もオンライン
人と人との接触機会を減らすため,仕事も学校もオンライン.病院に関しても2020年4月10日に厚生労働省が初診を含めて電話やオンラインでの診療を「時限的・特例的な取扱い」として容認することになった.注目されていた初診についても「医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲において(中略)差し支えない」(厚生労働省 事務連絡 令和2年4月10日)として,道を開いた.
ただオンライン診療は初診の場合,医師や患者のなりすまし,虚偽の申告などが懸念されることから,事務連絡では①オンラインでは,患者は保険証の提示,医師は写真付きの身分証明書などで,お互いに確認を行うことが望ましい②電話の場合は,生年月日,連絡先(電話番号,住所,勤務先等)に加え,保険者名,保険者番号,記号,番号等の保険証の記載事項を確認する③保険証の写しをメールに添付したりファクシミリで送る——などの本人確認の方法が列挙されている.
初診のオンライン診療は,医師が患者の状態を把握するのが,より難しいからだろうと漠然と思っていたが,医師や患者のなりすましの問題までは思いが至らなかった.
主治医の電話待ち
サイボーグ父さんにとって有難いのは,定期的に薬をもらいに行く,いわゆる「処方外来」を電話で行ってもらえることになったことだ.通常1回に1か月分の薬の処方をしてもらっている.つまり2か月に1回の定期検診のはざまに,薬を処方してもらうためだけに病院に行く必要があった.必ず医師の問診があるので,問診自体は短時間でもその順番待ちがあり,精算でも時間がかかる.さらに薬局に回って待たされると家を出てから戻ってくるまで2〜3時間,場合によっては半日近くを費やすことになる.
これを医師が電話で「問診」し,問題がなければ処方箋を自宅に郵送してもらえることになった.支払いは次の定期検診の際に一括で.処方箋をもって薬局に行くことは変わらないが,病院での院内感染のリスクはなく,病院を往復する時間もかからないので,これは楽だ.定期検診の際に,次の電話診療の予約を入れる.といっても電話はあらかじめ約束した日で,主治医の手が空いたときに,こちらのスマホに直接かけてくるので,何時になるか,午前か,午後かもわからない.「1日遅れることもあるのでそのつもりで」とも.お年寄りの場合は勘違いしてその日に病院に来てしまうことがあったようで,「くれぐれも病院には来ないでください」と念を押された.