サイボーグ父さんの『患者道』
- 第17回
- コロナ禍で迎えた定年
サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.
その日は出社
電話での処方外来の日は,会社に出社していた.朝から会社の机の上に個人のスマホを出して,いつでもとれるようにする.何時にかかってくるのかわからない電話を,仕事をしながら待つのは,なんとも落ち着かない.その日は幸い会議も,オンラインの会議も予定はなかったのでよかったが,昼を過ぎても音沙汰なし.忙しい主治医のことだから,その日にかかってこなくてもおかしくない.夕方の5時になっても同じなので,「今日はないのか」と思ったら,程なくスマホの呼び出し音が鳴った.聞きなれた主治医の声で「お変わりはありませんか」とこちらの状態を「問診」.「はい,とくに変化はありません」と答えると「それでは処方箋を送る手続きをします.1週間たっても届かなかったらご連絡をください」と言われ,診察終了.
サイボーグ父さんがすごくすっきりと,ほっとしていると隣の席の同僚が「どうなっているの?」という顔をしているので,事情を説明.その同僚も処方外来に行くことがあるが,その病院は電話での処方はまだやっておらず,1回の処方で2週間分しか薬が出ないそうだ.まだまだこうした取り組みも社会全体では始まったばかりということだろう.薬をもらいに行く人とその頻度は病院を訪れる人のかなりの割合を占めることは間違いない.処方外来の在り方が変わるとその波及効果が大きいことは明らかだ.
ただ処方箋の有効期限は「保険医療機関及び保険医療養担当規則」の21条3項イに定めがあり,「処方箋の使用期間は交付の日を含めて四日以内とする.ただし,長期の旅行等特殊の事情があると認められる場合は,この限りでない」とある.郵送で1週間近くかかるとなるとどうなのだろう.
後日レターパックで送られてきた処方箋を確認すると,電話があった日から4日目の日付の使用期限が印字されていたが,それを二重線で10日後に直し,医師の訂正印が押されていた.同封された説明書きには「今回の電話による診療,および院外処方箋の送付は,新型コロナウイルスの状況等を踏まえた臨時的な対応になることを申し添えます」とあった.「特殊の事情」に該当するということなのだろう.コロナで働き方自体が変わり,コロナが収束してももとには戻らず,在宅勤務を交えた新しい形に変化していくことは間違いないと思われるが,病院の診察はどうなのだろうか.少なくとも処方外来は今後も電話やオンラインで行うことを継続しても,サイボーグ父さん個人としては支障がないというのが偽らざる感想だ.いつ電話がかかってくるのかというドキドキは付きまとうが.
定年は2つ目のマイルストーン.次はICDの交換手術
そんなコロナに世界中が翻弄される中で,定年を迎えた.ICDを植込んでから6年余り.ショック作動は正常が1回.誤作動が1回あったが,電池はまだもっている.幸い同じ会社で再雇用になったため,健康保険も従来通りでとくに変更の手続きは不要.その点はとても有難い.
最初に突発性の心室頻拍を発症し,およそ1か月間入院していたときは,定年を迎えるなどという以前に,会社に,仕事に復帰できるのかを危ぶんでいた時期さえあった.ICDを植込んだときは,2人の子どもがまだ学生だったので,とにかく2人が就職して社会人として独り立ちするまで,文字通り「生き延びる」のが第1目標.無事に定年を迎えるというのは2番目のマイルストーンだった.次のイベントは間もなく電池がきれるICDを交換する手術になる.