お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第10回
早朝に心室頻拍 ~リコールのICDが正常作動~

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

リコールのICDが正常作動

 リコールとなったICDが作動したのは,メーカーとのやり取りが一段落した年末のとある日の午前5時ごろ.朦朧とした意識の中で,息切れがしているような感じがした.夢の中なのか現実なのかわからない.やがて左胸のあたりから波が広がるように上半身にショックが走る.

「あ,あ,あ,」

 その先が声にならない.体で感じた波紋は短時間で消えた.夢か? それともICDが作動したのか.ICDが作動したかどうか本人がよくわからないなんてことがあるのか.近くに置いてある血圧計に手を伸ばす.腕にシートを巻いて血圧を測る.血圧は上が100ぎりぎりだが,上下とも問題のない範囲.脈拍も70で普通だ.やっぱり夢だったのか?

 午前5時なので,今もしICDが作動していたとしてもデータが遠隔モニタリングでメーカーのサーバーに送られるのは明日の未明で,主治医に伝わるのは明日朝である.目が覚めてみれば体調は全く普通だ.朝7時まで,とりあえず寝室で様子を見て,もう一度血圧,脈拍を測るが異常なし.病院行ってさんざん待たされて,やっぱり夢でしたじゃ馬鹿らしい.本当に作動していたら主治医が明日,何か言ってくると思い,いつもの通り出勤する.

 

 

自宅で寝ている人の胸が光る(ICD作動)

 

 

主治医からの呼び出し

 翌朝一番で主治医から電話.やはり昨日のことは夢ではなく,ICDが実際に作動していた.すぐに病院に診察に来るようにとのこと.そうなるとまた入院してカテーテル・アブレーションをするのだろうか?

 これまで2回,心室頻拍を起こしたときは,とりあえず薬か電気ショックで頻拍を止め,病根を断つためにカテーテル・アブレーションを行っている.心室頻拍は今回で3回目だが,これまで2回焼いた場所とは違うところから再発したのならば,当然ありうるとは思う.しかしさすがに3回目となるとまるでイタチごっこで,効果があるのか.繰り返し再発する心室頻拍と今後どう付き合ってゆくのか.仕事はこれまで通り続けられるのか…….

電車とバスを乗り継いで病院に到着.医師の診察の前にICDのチェックをするのだが,その準備が整っておらず少し待たされる.おなじみの女性の技師さんがペースメーカー外来の手順で,ICDの作動状況やその時の心電図のデータを確認.

「未明にイベント(作動のこと)が出ていますね」

「寝ていたので,夢かと思ったのですよ」

 

 

「蹴られたようなショック」は

 実のところICDの作動について,よく言われるような「蹴られたようなショック」というものは感じておらず,作動したという確信が持てなかったのである.後日,知人から「心室頻拍が起きれば,意識が朦朧となっているので,ショックに気づかなくても不思議はない」と指摘され,初めて「そんなものか」と思ったものだが.

 別室の医師のところに移りすぐに診察が始まる.

「心室頻拍が起きましたがICDが正常に作動して,電気ショックで止めました.ICDにはとくに問題なく,体にも幸いおかしなところは見受けられませんでした.」

「寝ている間に一体いくつまで脈拍が上がったのでしょうか」

「171以上になり,3回ほど抗頻拍ペーシング(軽い電気ショック)をかけても収まらない場合に作動します.いやあICDを入れておいて本当によかったですね」

 予防的に入れておいたICDがまさしくその出番できちんと役割を果たしたので,医師としては,してやったりというところなのだろうか.いやそれほど大げさでなく,単に予定通りか.だがこれから一体どうするのだ.それを確認しないと.