お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第10回
早朝に心室頻拍 ~リコールのICDが正常作動~

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

ICDのチューニング

「しかし先生.再発したということは,またカテーテル・アブレーションをするのでしょうか」

 これが本日の診断のメインテーマである.しかし答えは予想とは違った.

「いや,ICDのチューニングで様子を見ようと思います」

 (え,やらないの?)

 思わず医師の顔を見上げる.医師の説明はこうだった.これまで2回カテーテル・アブレーションをやっても効果の検証ができなかった.また今回はICDが電気ショックをかけ心室頻拍を止めてから病院に来たので,頻拍が起きた状態での心電図の詳細なデータがない.そもそも病巣の場所の特定ができないというのである.ICDには心電図を測定する機能があり当然脈拍は感知できるが,病巣を特定できるほどのデータはとれないらしい.

 「あなたの場合は,心室頻拍はこれまでいつも早朝の安静時に起きています.その際に脈拍が60台に下がるようで,そのため,体が脈拍を上げようとして頻拍を誘発するのではないかという,仮説というか疑念があります.このためICDに備わっているペースメーカーの機能が働く設定を,現在は脈拍が40以下になった場合にしていますが,それを65以下で作動するように設定を変えました」

 またまた初めての内容でサイボーグ父さんも追いついていくのがやっとである.これで心室頻拍の再発は防げるのか,どうもよくわからないというのが本音だが,素人の患者としては医師の見立てに従うほかない.再び入院し3度目のカテーテル・アブレーションという最悪の事態には陥らずにすんだのだから,それはよいのだが.

「来週からまた普通に仕事に行ってもいいのですね」

「はい,結構です」

 しかしサイボーグ父さんの心室頻拍,3度あることは4度あるかも.その現実を直視しなければいけない.

 

 

自動車の運転の解禁は見送り

 ICDの作動から半月ほどたったところで,運転免許センターから1通の封筒が届いた.ICDの植え込み手術から6か月経過したので,新たな診断書の提出を求めるものだった.手術後6か月間は自動車の運転はできないが,その間に心室頻拍が再発しなければ,自動車の運転が解禁されるはずだった.

 ところが6か月経過の目前で,心室頻拍の再発・ICDの正常作動となったため,提出する診断書は,サイボーグ父さんが運転はできないことを証明する書類ということになる.しかもただ書類を出せば済むというものではなく,役所でかなり腹立たしい扱いを受けることになった.

 

 

「銭湯で感電,IHの鍋に慄く~身近な落とし穴~」に続く