今知りたい医療・看護のこと
- 第7回
- 看護と政策①
政治が看護にかかわるしくみ
政治が看護にかかわるしくみ
成瀬 昂 Takashi Naruse
東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 地域看護学分野 講師
岩本 大希 Taiki Iwamoto
ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 看護師・保健師
政治はどこでされている?
根拠のある意見が政策に
国の政策 町の施策
僕が今やっている仕事は,地域看護という学問を使って,政策提言や導入,定着,修正などをすることなんですけど,学生さんには政策にもレベルがあるということを知ってほしいです. 国策は,国全体で決める,国全体の共通の政策です. 一方で,各市や町の施策もある.そこでは「○○市はどういう人が便利に暮らせることにいちばんお金を使うので,市の予算でこういうルールを作ります」「国だとこういうケアをしてもお金がつかないけど,○○市ではつけます」っていうしくみを作れるんです. 実際に報酬のことまで踏み込んだ提言をする市町村レベルの施策は多くないでしょうが,これから将来,増えていくんじゃないかなと思います. そう思う理由は,医療において,介護,慢性疾患の療養,在宅など,都道府県では広すぎて管轄できないことが主要課題となってきているからです.国策は大筋を決め,細かい話は市町村レベルで濃淡をつけていく時代が来ると思います.「地域包括ケア」という単語が出てきた背景にも通じるところがありますね. でも,医療や介護の計画を自治体で考えていくのは大変なことなんです.方針を定めたり課題が変わってきたときに対応したりできるかどうかは,市町村の職員さんや住民さん達のセンス・力量などが問われます. そういう時代背景のなかで,学生や臨床の看護師,地域の看護大学が活躍できる部分って大きくなっていくと思うんです. 市町村くらいの単位であれば,その自治体の中で起こっている,「△△さんは,帰った日にこんなことで困っていたけど,それは今の国のルールだとこういうサービスが使えないからだ」など,患者さんが退院したあとの具体的なエピソードが重要だからです. そういう身近な単位で施策にかかわっていくことがしやすい,それはどんなところで働く看護師でも同じで,だからこそ地域医療・介護の施策の研究っておもしろいんですよ. 自分が感じたことや気づいたことは,ぜひ飲み会のネタに終わらせないで,事例集やレポートに蓄積していって,いろんなところに声を届けてもらえたらいいですね. | |
次回は看護師の声がどう役に立つのかなどについてお話していきます! |