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今知りたい医療・看護のこと

第4回
看護学生と勉強②
臨床で“優秀”に なるために成績は大事?

成瀬 昂

成瀬 昂 Takashi Naruse

岩本 大希

岩本 大希 Taiki Iwamoto

学校と臨床では評価基準が違う!

 

前回,国試の点数がぎりぎりでも立派に臨床で看護師をしている人はいるから大丈夫とおっしゃっていましたが,学生のときに優秀かどうかは臨床での活躍に関係ありますか?

成瀬 昂

学生時代の成績そのものは臨床での指標にならないです.でも,勉強や実習に対する取り組み方が優秀な人というのは臨床に出てもそれをうまく活かしていけますね.自分がやりたいこと,できることを効率的に選んで,不得意なことは人に教えてもらって,まわりの人も幸せにするし,自分も楽しみ,頑張ろうってやれる人は,臨床に出ても同じように問題解決能力を高めていっているように思います.

岩本 大希

やっぱり臨床は実践の場なので,看護展開をしていくんですよね.当然,看護展開は知識だけあってもできないので,臨床での評価基準は学生時代とは変わります.学生時代の成績がよかったほうが優秀か,そうでないのか,一概にはいえないですね.

「勉強が嫌いだ」と思うのは,興味がないことを,テストで合格するためや,先生や先輩に怒られないようするために,必死に覚えるからじゃないですか? 勉強をしているように見える人がみんな,まじめで人格者で看護に情熱を持っている,と色眼鏡で見ないように,まず考えたほうがいいでしょうね.

 

看護はチーム,苦手があっても大丈夫

  
成瀬 昂

看護師だって人間ですから,いろんな人がいると思います.丁寧にたくさんの知識を蓄積することは得意だけど,その場ですばやく応対したりするのは苦手,という人もいれば,その逆の人や,どちらでもない人もいて,それぞれによいところや苦手なところが,多少なりともあるはずなんです.

看護はチームで行う作業ですよね.自分1人で得意なことをやって完結する仕事ではありません.常に自分はこういうのができる,こういうのが得意だなと見つけて,まわりの人と一緒に仕事をして,補いあえばいいんです.今は学生の立場で,勉強や実技,記録や対人対応等,色々と苦手なところはあると思いますが,看護師になったらそれを全部1人で完遂しなきゃいけないわけではありません.みんなで補いあってやれば怖くない,自分が得意なことをちゃんとつかんでおこう,という気持ちでいけばいいと思います.

岩本 大希

あとは,きっと足りないところがあれば先輩がきたえてくれますしね.

看護師になって,不思議でおもしろいなと思うのは,看護師1年目のことを1年生って言うことです.2年生,3年生も.4〜5年ぐらいになるとあまり言わないんですけど,3年目くらいまではまだなんか…….

成瀬 昂

ビギナー,なんですね.

岩本 大希

そう.学んでいる過程だし,学べる時期,勉強しなければならない時期.国試に受かって資格をもっているわけだから,当然,プロフェッショナルではあるんですけど,でも十分じゃないというのがたぶんみんなの共通認識なのでしょう.

 

成瀬 昂

確かに.おもしろいですね.いい意味なんだとは思いますけどね.

岩本 大希

はい,助けてあげる,という意味が込められているのだと思います.ただちょっと,学生じゃないけど,半人前なのよ,みたいな.

成瀬 昂

そういう文化って,とても看護らしいですね.みんなで育て・育てられ,お互いに補完しあいながら働くことで,お預かりした命に対して最適なアウトプットを目指すという姿勢が,自然と組織の中に組み込まれているんですね.

岩本 大希

看護学生は,やっと卒業したと思ったら,次はまた「1年生」になってスタートですね.

成瀬 昂

国試は1つの最低限を整えたという場でしかないから,臨床に行ったら,また臨床なりの最低限のレベルで,技術とか,人間的なこととか,コミュニケーション力なんかが問われます.整えなければならないことが増えるんです.でもそれはそれでまた先輩たちが一緒に整えてくれるから大丈夫.「最低限を整えられている」という真摯な気持ちで教育を受けて,自分のいいところを伸ばし,チームでやっていけばいいんです.

 

長所を伸ばして活躍しよう!

岩本 大希

できないところはときには人に頼ることも大切です!

成瀬 昂

はい,できないことは最低限のレベルまで整えればいい.できるところを自分の強みだと思って,それをもとに「役に立とう」,「自分には何ができるか」って考えるほうがいいですね.臨床で働いている看護師さんたちは,無意識にその感覚があるうえで,自分の強みを活かすために勉強するから,楽しいんでしょうね.

成瀬 昂

学生さんと話をしていると,「自分は強みなんかありません,何もできることなんかありません」って考えてしまう人がたくさんいます.そういう人に,逆に欠点は何? と聞くと,本当にたくさん出てくるんです.僕は時々,ちょっと視点を変えて考えてみようか? と問いかけます.「欠点」は長所の裏返しだ,ってよく言いますよね.それだけ聞くとなんだかよくわからないんですが,自分がなぜそんな欠点があるのか,その根本にはどんな傾向があるのか,と,掘り下げてみましょう.そして,「欠点として見えているものでも,実はこんな長所になりえる要素を多分に含んでいるんじゃないかなぁ……」と,自分で言葉にしてみるといいかもしれません.強みを探したかったら,たまには自分の欠点を探して,それがつまりどんな長所だと言い換えることができるか,考えてみるといいかもしれませんよ.

看護師になるなら,国試は最低限の条件ですが,授業とか,もっと深い勉強は,「こんな看護師さんになりたい」とか,「こんなことが自分は得意だから,こういうことをしてあげたい」とか,自由でポジティブな発想で好きなことを青天井で学んだらいいと思います.最低限のところは押さえるけど,それ以上は取捨選択しましょう.その選別ができないから全部入れようとしてパンクしているのだったら,それはもしかしたら授業ではなくて,取捨選択ができてないことが問題かもしれません.

岩本 大希

何かやりたいことがある人は,思いっきり頑張ってほしいですね!

 成瀬 昂 

はい.一方,特にやりたいことがあるわけでもなく,やる気も出ず,勉強に向かえないなぁ,という人は,まわりに頑張っている人が多いとそれだけで引け目を感じて落ち込んだり自分を否定してしまうかもしれません.でも,別にいいんですよ.やりたいことが特に見つからないまま,とりあえず勉強や仕事をしていても,「最低限」がこなせていればそれでいいんです! これは,僕からぜひみんなに伝えたいことです.看護学生って,勤勉で優しくて……というイメージを押し付けられやすいので,それに負けるな! って思いますね.とにかく「最低限」のことさえきちんとすれば,それ以上のことはなんでも大丈夫なんですよ!