お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第8回
退院と仕事への復帰~手続きの山,スマホの恐怖

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

復職にも診断書が必要

 職場への本格復帰を前に,「仕事をしても差し支えない」というお墨付きとなる診断書をもらった.会社を長く休む際に,会社に出す診断書が必要なことは分かっていたが,最近は闘病生活から仕事に戻る際にもやはり,会社に診断書を出す必要があるそうだ.

労働契約法(2008年3月施行)という法律の第5条に,『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする』と書かれている.復帰の際の診断書は「無理やり働かせたわけではありません」という,会社にとっての別の意味での「お墨付き」という一面もあるだろう.実はこのとき必要となった診断書は,会社向けをはじめ障害者手帳,障害年金,運転免許の手続き向けに合計4通必要となった.診断書の作成には保険が効かず,それぞれに数千円が必要になる.

 

診断書の提出先 用途
市役所 障害者手帳
年金事務所 障害年金
運転免許センター 運転免許
勤務先 復職に必要

 

 

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障害者手帳 交付3年後に等級の見直し

 障害者手帳の申請の窓口となる市役所で,「心臓の不整脈で,ペースメーカーの進化版の『ICD』という機械を胸に入れたのです.医師から『障害者の1級になる』と言われたので,その手続きの方法を伺いに来ました」と告げた.すると窓口の女性は「障害者1級ですね」と言いながら,すぐに数枚の書類を出してくれた.

「こちらが障害者手帳の申請の書類です.ご本人だけでなくお医者様に記入してもらう書類がありますのでご注意ください.あなたが手術した病院の場合はこの先生になります」

 示された1枚の書類には病院名,専門の科目と医師の名前の一覧表があり,主治医の名前もあった.障害者手帳の申請にサインできる医師はすべて登録されているのである.正式には「身体障害者福祉法に基づく指定医師」というらしい.障害者の等級はそれによって受けられる行政のサービスや手当をはじめ,交通機関などの割引などに直結するため,きっちりとした,しかも限られた医師による認定手続きが決まっている.

 

 

障害者雇用、サイボーグ父さん1人で2人分

 「障害者雇用促進法」に基づき,役所や民間企業は一定の割合で障害者の雇用をする義務を負う.法定雇用率を計算する時は,重度の身体障害者1人を「週所定労働時間30時間以上」で雇用すると,この制度上は身障者を2人雇用しているカウントになるのである.つまり職場に復帰すると,会社は「サイボーグ父さん」という同じ人を雇用し続けているのだが,結果的に雇用している障害者の数が2増えることになる.

 実際の手帳は申請から1か月あまりで交付された.市の窓口の担当者によれば3年後に等級の再認定があるとのこと.障害者手帳を見ると「疾病による自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される心臓機能障害 再認定○○年×月」とICDを植込んでから3年後の年月が明記されていた.

 

 

障害年金と障害者手帳の等級は別

 障害者手帳の次は障害年金の手続き.こちらは日本年金機構の事務所で行う.障害者手帳で市役所の窓口を訪ねたときと同様に「どこまで話が通じるのだろう」という不安がよぎる.

「ペースメーカーでなくICDですね.3級で確かに支給対象になります」

「え,障害者で1級と聞いているのですが」

「いえ3級です.障害者手帳とは等級が違うのです」

 そうだったのか.同じ厚生労働省の所管なのだが,障害者手帳と障害年金の等級は同じではないというのは実際に手続きをして初めて知った.