お役立ち満載

サイボーグ父さんの『患者道』

第8回
退院と仕事への復帰~手続きの山,スマホの恐怖

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

運転免許証 手術後半年は免停

 自動車の運転は,手術後半年できない.免許センターに診断書を提出したところ

「半年後に改めてこちらから診断書を提出するようご案内を郵送します.半年間,お体に問題がなければ運転を再開することができます」

とのことだった.免許書の裏側に「免停 6か月」とか,ハンコでも押されるのかと思っていたが,そういうことはなかった.

 

 

目の前のスマホ 銃を突き付けられた気分

 通勤で職場にたどり着くまで最初の難関は,満員電車のスマートフォンだ.まずどうやってシルバーシートを確保するか作戦を練る.しかし運よくシルバーシートに座っても,目の前に立った,とくに背に低い女性がスマホを見始めると,ちょうどサイボーグ父さんの頭の少しくらい上になり,まるでピストルを突き付けられているような気分.

 しかし最近のスマホはひと頃ほど強い電場を必要としなくなったことから,2015年10月からシルバーシート付近でも鉄道会社の呼びかけは「混雑時には電源をお切りください」という表現に変わり,「混雑時」を「お客様同士の体の触れ合う程度の混雑時」としている.

 そのうえで「植え込み型医療機器は人によって装着位置が異なりますので,体の近くで携帯電話を使用されることに不安を感じるお客様がいらっしゃいます」と配慮を求めている.

 「お客様同士の体の触れ合う程度の混雑時」とは通勤時間帯では日常茶飯事.いつものことなので,電源をいつも切れと言っていた従来と実態は大差がない.守られないかもしれないことに変わりはないが,具体的に干渉するかどうかというよりも「不安への配慮」というまさしくマナーの問題として引き続き訴えているということか.

 

 

内線スマホ

 会社では,サイボーグ父さんが入院している間に,内線電話を固定電話機からスマートフォンに切り替え,社員1人に1台ずつ,内線スマホが支給されることになった.つまり各人のデスクの上からは固定電話が姿を消した.業務の電話だから,左手で受話器を持ち,右手でメモを取るのが普通だが,左胸にはICDを植込んでいる.15センチ以上スマホは離す必要があるので,これからは左手でなく右手でスマホをもって会話することになる.そうなると右利きの人は,会話をしながら左手でメモを取るということはできない.

 結局,スマホにイヤホンとマイクがついたヘッドセットをつけて,スマホ本体は体の右斜め前において会話し,メモをとることにした.ただいつも両耳にヘッドセットを装着したままでは,周りの音や会話が聞きにくい.最終的には,スマホはヘッドセットを挿し込んだ状態で机の上に置き,バイブ(振動)で着信を確認してから両耳に装着して対応することにした.

 ところが思わぬ知らせがもたらされたのは,職場復帰後,間もないころだった.

 

(次回「突然のICDリコール」に続く)