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サイボーグ父さんの『患者道』

第11回
銭湯で感電,IHの鍋に慄く~身近な落とし穴~

サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.

リハビリルームは電子レンジの中と同じ

 病院でもはっとしたことがあった.腰に痛みというほどでもないが時々違和感があるので,近所の整形外科にかかったところ,椎間板ヘルニアの初期の段階ということで,湿布薬と腰によい体操を習った.その際に病院内のリハビリルームで腰を牽引する「牽引治療」をすることも勧められた.電気マッサージのように直接体に弱い電気を通すことはなさそうだが,念のため聞いてみた.

「私は不整脈の持病があり,体内にICDを植込んでいるので強い磁気や体に電気を通すのは,避けないといけないのですが……」

 すると医師の答えは

「あ,そうですか.リハビリルームの中はいろいろな機械があって,電磁波を出すものもあります.リハビリルームの室内はある面,電子レンジの中のような感じなので」

 避けたほうがよさそうだということになった.

 

 

マッサージ器も要注意

 マッサージ関連の機器で、注意が必要なのは直接体に電気を通すタイプだけではない。電動のマッサージ椅子や首などからかけるタイプであっても購入前に注意書きをよく読む必要がありそうだ。取扱説明書にはメーカーや機器のタイプによって「ペースメーカーなど体内植込み型医用電気機器とは絶対に併用しないで」「使用前に医師に相談すること」などと書かれているケースがあるからだ。実際に家電量販店などでこうした機器を物色する際には、かなりその気になって商品のパッケージや説明書を確認しないと見落とす恐れがある。サイボーグ父さんは実際に首から掛けるタイプをレジで支払いをすませて駐車場に戻る際に、パッケージに小さな文字で「絶邸に併用しないで」という記載を見つけ、事情を話してレジで返品、返金してもらう羽目に陥った。

 

 

「要注意」は変わる・増える

 サイボーグ父さんは,ICDを入れるときに一番気になったのは「携帯電話の電波による干渉」だったが,かつてほど携帯電話は強い電波を出さなくなったので,引き続き要注意ではあるが,びくびくする必要は感じていない.全自動の麻雀卓はサイボーグ父さんのような年配の男性でも接する機会は減っているのではないか.

 いまはむしろIHの調理器や,電気自動車の普及に伴い街中で増える急速充電器などを気にしなければいけないだろう.車のキーを差し込む操作なしでドアロックの開閉やエンジン始動・停止ができるシステム(いわゆるスマートキーシステム)も,そのひとつだ.こちらも「車両に搭載された発信機から約22㎝以内に植込み型心臓ペースメーカー等の機器を近づけないように」といった注意が自動車メーカーのサイトで記載されている。先日、サイボーグ父さんが訪れた自動車のディーラーでは、接客の担当者が「実際にペースメーカーを入れたお客さんに会うのは初めてだが、知識としては知っています」という答えだった。

 こうしたことは,ICDの取扱説明書やメーカーのホームページなどにまとめて書かれている.しかし注意事項は多く,詳細は小さい字で書かれているケースもあり,一度目を通したくらいではすべてが頭に入るというものでもない.

 また,銭湯での感電やテーブルに仕込まれたIH調理器のように,要注意のもの自体を見落とすケースもある.新しい製品やサービスは暮らしを便利にしてくれるが,その中に「新たな伏兵」が潜んでいるかもしれないことは,常に心掛けておく必要がある.

 

 

次回「診断書の記載漏れで障害者等級の誤認定」に続く