看護教員がおくるリレーエッセイ
- 第3回
- 看護職の近未来
松田 直正 Naomasa Matsuda
淑徳大学看護栄養学部看護学科 講師 看護師・保健師・社会福祉士
万一,看護職がほかの資格と統一されるとしたら
ここまで,若干,論文みたいになってしまいました.ごめんなさい.でも,昨今の看護職をとりまく状況が10年前とは全く異なっていること,排泄,清潔,栄養摂取といった基本的なケアが,すでに看護職でなくてもできること,とくに介護保険施設(特養・老健・介護療養型医療施設)等での喀痰吸引は一定の条件のもとで看護職でなくてもできること,今後の厚労省のワーキンググループで,他国を参考とした資格の統一が検討されることを,どうしてもお伝えしたかったのです.
国庫負担を最少にしてかつ効率的な人材活用を考えなければならない社会情勢,各職能団体の「より高度な役割を担いたい」という発想を背景に,現在にいたっているように思います.私はこうした議論や法整備の中で,看護とは何か,看護職が患者に与える安心感とは何か,といった論点がほとんどないことを危惧しています.看護職の近未来は,どうなっていくのでしょうか.
私のような教員も,学生のみなさんも,看護とは何か,患者さんや苦悩している人に何ができるのかを一番大切にすべき時期が来ています.
前号で瀬戸先生が,入院患者さんを深夜にディスコに連れ出したエピソードを紹介していましたが,こうした「ディスコに連れて行こう」という判断,ディスコでフィーバー(死語)している最中に瀬戸先生が患者さんを看護の視点を持って観察し,そして,何事もなかったかのように病棟に戻っていくという技,すべて看護職ならではだと思うのです.
看護職が資格統一の渦に巻き込まれるのかどうか,現時点では全くわかりません.しかし,万一看護職がほかの資格と統一されそうになったとき,患者さんや社会から,「看護師さんって今のままがいいよね」と声があがるような私たちでありたいものです.
そのために,今,学校で,実習で,「看護とは何か」「看護職は何をする人か」を念頭に置きつつ,患者さんの苦悩に寄り添えるあなたでいてほしいと願っています.
出典
1)福祉新聞:「福祉専門職の統合を検討 1人の職員で子どもから高齢者まで」
http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/8527
2)厚生労働省:まち・ひと・しごと創生サポートプラン
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000077521.html
3)筒井孝子:実践キャリア・アップ制度 介護人材ワーキング・グループ第2回委員会(平成22年12月20日)資料2
「介護人材における実践キャリアアップ制度構築のための基本的な考え方」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisinteam/TF/kaigo_dai2/siryou2.pdf
4)厚生労働省:喀痰吸引等制度について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/tannokyuuin/
5)厚生労働省:認定特定行為業務従事者認定証件数(経過措置対象分)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000060260.pdf
6)日本看護協会:資格認定制度 専門看護師・認定看護師・認定看護管理者
http://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn
7)日本看護協会:看護職の役割拡大の推進 特定行為に係る看護師の研修制度の法制化に向けて
http://www.nurse.or.jp/nursing/tokutei/index.html
(この記事はナーシング・キャンバス2015年6月号 に掲載されたものです)