看護教員がおくるリレーエッセイ
- 第5回
- 患者さんに育てられる学生
松田 直正 Naomasa Matsuda
淑徳大学看護栄養学部看護学科
患者さんに「ホッとしてもらえる」態度
さて,学生は,前述のような気づきを得たあと,看護計画の立案に苦しみます.ほかの領域では,「看護問題がわかったら,実習期間中に変化が目に見えるような目標を設定し,看護計画を立案し,看護実践をして,その評価をする」ということを教わっているからです.
「目に見えるような目標を設定」する……受け持つ患者さんにももちろんよりますが,精神看護学実習ではなかなか難しいのです.ここで問題となるのは,私は,計画よりも,看護学生の態度だと思うのです.難しくて,苦しくて,患者さんを遠ざけてしまうことは,看護学生の成長を止めてしまいます.
ちなみに態度といっても,髪型やメイクやナース服の着こなしのことではありません.究極的には,患者さんにほんのちょっとでもホッとしてもらったり,ふっと安心感を得てもらったりする学生の全身から溢れる態度が重要です.
こうした態度を身につけることが,実習の大きな目標の1つであるはずですが,昨今,こうしたことが重要視されていないような印象を,私は受けています.
では,どうしたらいいのでしょうか.前号では,看護学生が「患者さんの思いや考えを受け止めて,対象理解を行うことも立派な看護である.患者さんの発言に対して,肯定や否定,評価をせず,そばにいて向き合う姿勢を見せることが大切であると学んだ」と述べたことが書かれていましたね.素晴らしい気づきです.
私は,誤解を恐れずにもう少し言えば,患者さんの隣に座って,患者さんといっしょにボーッとすることも重要な看護だとみなさんにお伝えしたいです.
患者さんの状況によっては,何も話せず,体動も見られないこともあるでしょう.それでも患者さんに寄り添うのです.あなたに人をホッとさせる態度が溢れているとしたら,患者さんの表情に,ごくごくわずかな変化が見られるかもしれません.そのわずかな変化の積み重ねが,あなたの行動を看護にしていくのです.
(この記事はナーシング・キャンバス2015年8月号に掲載されたものです)