看護教員がおくるリレーエッセイ
- 第7回
- 看護と平和
松田 直正 Naomasa Matsuda
淑徳大学看護栄養学部看護学科
国民保護法を知っていますか?
暑い日が続いていますね.今,まだ夏休み中の方と,夏休みが終わって講義や実習が始まった方がいる時期ですね.有意義な夏休みであったことと思います.2015年,日本は戦後70年を迎え,いろいろな報道,また戦争をテーマにした映画の公開等,戦後生まれの私たちも戦争を意識した夏だったのではないでしょうか.
私は,沖縄県平和祈念資料館,ひめゆりの塔とひめゆり平和祈念資料館,原爆ドームと広島平和記念資料館を訪問しました.書きたいことはたくさんあるのですが,ここでは看護に関連したお話を中心にしたいと思います.
みなさんは,「国民保護法」をご存知でしょうか? この法律は,正式には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」といいます.実はこの法律は,看護職をはじめ,医療の国家資格を持つ者と非常に密接な関係があります.しかし,少なくとも私の周りでは,この法律と看護職の関係を知っている人はほとんどいないのです.
この法律の概要を内閣官房では,「武力攻撃事態等において,武力攻撃から国民の生命,身体及び財産を保護し,国民生活等に及ぼす影響を最小にするための,国・地方公共団体等の責務,避難・救援・武力攻撃災害への対処等の措置が規定されています」と示しています1).そして,第85条では,「1 都道府県知事は,大規模な武力攻撃災害が発生した場合において,避難住民等に対する医療の提供を行うため必要があると認めるときは,医師,看護師その他の政令で定める医療関係者に対し,その場所及び期間その他の必要な事項を示して,医療を行うよう要請することができる.2 前項の場合において,同項の医療関係者が正当な理由がないのに同項の規定による要請に応じないときは,都道府県知事は,避難住民等に対する医療を提供するため特に必要があると認めるときに限り,当該医療関係者に対し,医療を行うべきことを指示することができる.この場合においては,同項の事項を書面で示さなければならない」 (下線・傍点は筆者)
みなさんは戦後70年を迎えた今,この法律をどう読み取りましたか? 日本が武力攻撃を受け,みなさんの手元に,医療を行うことを指示する書面が届く日がくるかもしれない,そう考えただけで私はみなさんのこと,自分のこと,家族のこと,世界情勢が心配です.武力攻撃を受けた際,避難住民を看護することは,私は率先して行いたいと思います.ただ,「避難住民等」となると,私はなんとなく最前線で負傷した者に最前線で看護することもあるのかもしれない,そんなふうに推測してしまいます.考え過ぎでしょうか.