看護教員がおくるリレーエッセイ
- 第9回
- ピカピカの患者さん
松田 直正 Naomasa Matsuda
淑徳大学看護栄養学部看護学科
男性患者さんへの看護での,あるこだわり
看護するうえで,誰しもこだわりがあるように思います.私のこだわりは,男性の患者さんに対して,ひげそりを徹底的にすることです.
私自身は,ひげそりをしない状態で外出することはありえません.ひげを伸ばしたオシャレをする人もいますが,それはそれでそれなりに手入れをしていると思います.
つまり,男性は,一般的にはひげが伸びた状態や手入れができていない状態は,スッキリしないものである,と断言します(私のこだわりなので,明確な根拠はありません).
私は精神看護学実習だけでなく,基礎看護学実習や成人看護学実習を担当することもあり,そんな職業柄,大学病院やいわゆる一般の病院,精神科病院,介護保険施設等を訪問することが多いのですが,患者さんに対してひげそりをあまりしていない病棟に出合うことがあります.
こうなると,学生を引率している訪問の場合,私の出番です.
以前もチラッと書きましたが,実習初日は,「学生が患者さんをどう観るか」を私自身が確認したいため,たとえ患者さんのひげが伸びていても,私は手を出しません.ひげそりを含めた患者さんの整容を学生がどうとらえているのかを観察したいのです.
そして,実習2日目,学生がひげそりを計画していない場合で,かつ,患者さんのひげが伸びている場合,私は自らひげそりを患者さんにします.「ひげそりをしましょうか?」と患者さんに尋ねて,断られたことがありません(松田調べ).
なぜ学生ではなく,自分が率先してひげそりをするようになったのか,それには理由があります.
私の知る範囲のお話ですが,学生はT字カミソリを使ったひげそりの練習をしていないのです.「男性なら日常的に使っているのでは?」と疑問に感じる方もいるかもしれませんね.
しかし,たとえば,ある男子学生は「僕はほとんどひげが生えてこないし,床屋さんで月に1回顔そりをしてもらうだけで十分なんです.T字カミソリも電気シェーバーも持っていません」と言います.
ときどき,「学生の生活体験が未熟で,それが看護にも影響する」というような話を聞きますが,ひげそりも同様のようです.
とくに女子学生は,ひげそりを看護計画に入れるなんて毛頭考えていないことが多々あります.看護実習の後半で,ある患者さんは,受け持ちの学生に対して,「ひげそりをしてほしいから,あなたの先生を連れてきて」と言うこともありました.