看護教員がおくるリレーエッセイ
- 第12回
(最終回)
- キャリアデザイン
(最終回)
瀬戸 奈津子 Natsuko Seto
関西医科大学看護学部設置準備室 教授
導かれるままの転職
「キャリアデザイン」とは,自分の職業人生を自らの手で主体的に構想・設計=デザインすることです. 自分の経験やスキル,性格,ライフスタイルなどを考慮したうえで,実際の労働市場の状況なども勘案しながら,仕事を通じて実現したい将来像やそれに近づくプロセスを明確にすることが,キャリアデザインの要諦です1).
私は看護専門職として学び続ける先輩をモデルに大学院に進学した後,糖尿病センター開設時の外来看護師長として,民間病院に勤めました.大学病院育ちで経済観念皆無だった私は,想定外のリアリティショックを受けながら,限られた時間と資源で提供できる看護を追求し,外来看護の役割や看護管理に関心を持つようになっていきました.
そんな中,恩師の導きにより,糖尿病看護認定看護師の養成,すなわちエキスパートナース教育に携わることができました.当時若かった私にとって全力投球の真剣勝負であり,振り返れば教えられ学ぶことばかりでした.
看護継続教育(現任の看護師を対象とした教育)から始まった私は,「時間がかかって根気のいる学生対象の看護基礎教育なんて到底無理かもしれない…」と不安を抱きつつも,縁あって,臨床実践に根ざした教育・研究を大切にする大学院の先輩の下で働くことになり,学生への教育の真髄について学ぶことができました.
そして今,卒業後のゼミ生たちが5・6年目ナースとして立派に働いていたり,大学院に戻って臨床での研究課題に取り組んだりするのをみて,一仕事終えた手ごたえを得ることができました.満たされたマインドをもとに,この4月から新しい仕事にチャレンジします.
*
糖尿病看護認定看護師のAさん.外来看護を実践する中で,ある外来患者さんの異変を感じて医師に申し送ったにもかかわらず,見逃されてしまった経験を糧に,「医師の捨てた聴診器を私が拾う!」という強い意志をもってナースプラクティショナーになりました.
また,実習病棟の看護師Bさんは,産休に入る前日まで機敏に患者さんの急変に対応し,リーダーナースとして采配を振るっていました.育児休暇後は別の部署で活躍予定のきらきらナースです.
ゼミ生の卒業時に,私はいつも「どの領域でも一緒,あなたたちはできないことばかり.石の上にも3年,つべこべ言わずに働く! でも批判的思考は忘れずに!!」とエールを送ります.
自らの性格やライフスタイルを考慮しながら,看護専門職として誠実に働く中で,実現したい将来像がおのずと見えてくるのではないでしょうか.学生の皆様にも,かけがえのない出会いがありますように.
参考文献
1)日本経団連出版編:人事・労務用語辞典.第7 版,日本経団連出版,2011.
(この記事はナーシング・キャンバス2016年3月号に掲載されたものです)