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国際化社会と看護

第10回
看護師の判断の違い

小笠原 広実 Hiromi Ogasawara

医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)

優先するのは患者さんの意思?家族の意思?

また,日本の高齢者の看護では,ご本人は治ったら自宅に戻りたいと思っているのに,家族は介護が困難だと考えて,施設入所を考えているというようなケースもよくあります.看護師としては,一番重要なのは,ご本人の意思ですから,その思いを尊重し,社会関係を調整していくことが求められます.

 

ところが,インドネシア人の看護師にこういった問題を解いてもらうと,「患者本人の思いを確かめる」よりも,「家族の思いを確かめる」ことを優先させる選択肢を選ぶことが多いのです.実際に介護をするのは家族で,家族が了承しなければ医療者はどうすることもできないため,実際の看護場面では,どうしても家族の思いを優先して決めることが多いようです.

 

日本のように援助をしてくれる福祉サービスが整っていないという事情もあるかもしれません.また,入院期間は急性期のみに限られ,日本に比べて入院日数がとても短いため,とても,社会関係を調整している時間はないのかもしれません.

 

そのような状況は理解しながらも,やはり患者本人の意思が一番重要であるという考え方も伝えなければなりませんでした.