国際化社会と看護
- 第6回
- 病気のときの食
小笠原 広実 Hiromi Ogasawara
医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)
おかゆも看護の大切な配慮
普段はインドネシア料理をおいしく食べている私でさえ,体調が悪いときには,小さい頃から食べ慣れた味がほしくなります.短期の出張で病気になったときには,なかなか食べられるものを探すのが難しいでしょう.私も,体調を崩したのはホテル住まいのときだったので,クリニックでおかゆを用意してもらえたのは,本当にうれしいことでした.気分が少しよくなったとはいえ,「どこに寄って,何を買って帰れば食べられそうか.持ち帰りを用意してもらっている間,立って待っているのがつらいかな.あそこの店まで歩くのもしんどいな」などと考えていたからです.
病気や下痢のときには,何も食べなくてよいと考えている人も多いと思います.でも,消化器官が少し回復したら,消化のよいものを少しずつ食べていくことは,回復を促進します.治療としてではなく,看護としてとても大切な配慮になるのだと思います.
私が教える,EPAで看護師候補者として3年間日本に行ったことがあり,現在はクリニックで働いている看護師たちが,「患者さんには食べられそうになったら少しでも食べてほしい」,「食欲が出るように,食器を少しかわいいものにしたい」,「大きいものだと食欲が落ちるから,小分けして出してあげたい」と言ってくれたことは,看護師として,とてもうれしいことでした.
看護は,こまごまとした骨折り仕事だとナイチンゲールが言っています.1つひとつは,本当にこまごまとした行為ですが,1つひとつ整えていくことにより,患者さんの生命力が回復していく手助けができたら,素敵なことですね.外国の場合は,そこに外国ならではの生活状況への配慮が加えられたらいいですね.
(この記事はナーシング・キャンバス2016年9月号に掲載されたものです)