サイボーグ父さんの『患者道』
- 第16回
- どっちが早い? ICDの電池切れと定年退職
サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.
ICDの交換時期と定年退職
電池の残りが2年程度になると嫌でも次のICDの入れ替えの手術を意識してくる.サイボーグ父さんの場合は,60歳の定年を過ぎてすこし経ったくらいになることが予想される.ただこの電池の残存年数,ショック作動の有無などで変化するものだが,主治医にそのあたりのことを聞いてみると「電池の残量が少なくなると,消耗の速度が早くなることもある」ということだった.
これはなかなか微妙である.そのため残存年数が短くなってきたら「ペースメーカー外来の間隔を短くして,監視を強め,入れ替えの時期を決める」というが,それが定年退職前と後では,サラリーマンの場合,取得可能な有給休暇の日数や健康保険の給付内容が変わってくる.当然,定年前の方が,使わずに残っている有給休暇が多くあり,有利な面も多い.この事情は医師にコメントを求めるような類の話ではない.
かといって定年退職前に「駆け込み」で入れ替え手術を受けるというのも,それはそれで本当に体にとってベターなのか.医療機器の進歩は日進月歩なので,後の方が,より小型で高性能になっている可能性は高い.1年2年でそう変わるものではないかもしれないが.
しばらくは,電池がきれる時期と,サラリーマンの卒業時期を巡り,頭を悩ませる日々がサイボーグ父さんには続くことになる.
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16回にわたり連載してきた「サイボーグ父さんの患者道」は今回で,一段落となります.このまま無事にいけば,まもなく勤めは定年を迎え,そう遠くなくICDの電池が切れるため,交換する手術を受けることになります.最初に心室頻拍の発症で1か月あまり入院していたときには,「定年まで働く」とかいう以前に,「仕事に復帰できるかどうか」を心配していたサイボーグ父さんとしては,感慨深いものがあります.機会があれば,「サイボーグで迎える定年」「ICDの交換手術」にまつわるエピソードをまたご紹介できればと思います.