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看護教員がおくるリレーエッセイ

第1回
治らない病気に対して,
看護学生が持つイメージについて

松田 直正 Naomasa Matsuda

淑徳大学看護栄養学部看護学科 講師
看護師・保健師・社会福祉士

まっさらな状態で,患者さんと向き合おう

さて,前置きが長くなってしまいましたが,今回お伝えしたいことは,「実習では,私は学生に対して,患者さんの苦悩を全身で受けとめ,借り物ではない,自分の言葉でそれを言語化できるように支援をしている」ということです.

患者さんの苦悩と向き合うことは,実に難しく,容易なことではありません.そしてもう1つ,学生のみなさんを悩ませてしまうことを覚悟のうえで,教員としての悩みをお伝えします.

学生が,疾患がなかなか治癒せず,入院が10年単位で長期化している患者さんを受け持ったとき,患者さんに対してどこかよそよそしい態度を示す場合がまれにあることです.

「どこかよそよそしい」というのは,明確なものではありません.学生は,ちゃんと患者さんのところにも行くし,お話もするし,患者さんに笑顔も見せているのです.でも,なんとなくどこかよそよそしいのです.

原因の1つに,緊張もあるでしょう.しかし私は,疾患そのものが治らない,あるいは治りにくいことに,どこかおそれや不安を感じているのでないかと考えています.骨折が安静にすることで治る,がんをオペで切除すれば治るなどといった場合の看護とは,だいぶ違うわけです.

学生にとって,治らない,治りにくい病気は,マイナスのイメージが強すぎるようです.病気とともに生活している方々も,たくさんいらっしゃいますが,看護学生にとっては,病気そのものが,悪者で悪玉で,取り除かなければ不幸せ,そんなイメージが先行しているように感じています.

まずは,そんなイメージを忘れて,まっさらな状態で患者さんと向き合うことが大切です.それが,結果として,患者さんの苦悩に寄り添う第一歩になります.

 

*本連載に登場する事例は完全に架空のもの,あるいは 一部分が事実に基づいていたとしても大幅に情報を変更しており,架空のものと考えて差し支えありません.

 

(この記事はナーシング・キャンバス2015年4月号に掲載されたものです)