お役立ち満載
国際化社会と看護
- 第10回
- 看護師の判断の違い
小笠原 広実 Hiromi Ogasawara
医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)
判断の裏の考え方を伝える
少しショックを受けた出来事もありました.高齢者の看護で,点滴を自分で抜こうとしている患者さんにどう対応するかという問題で,「ミトンの手袋をつける」という回答を選択した看護師がいました.これは拘束のひとつですから,原則としてやってはいけない対応になります.そこで,なぜその回答を選んだのかと尋ねると,日本の病院でそのように対応しているのを見たから,というのです.
インドネシアでするのかと尋ねると「しない」と言います.家族や親族の誰かが必ずそばに付き添っていますから,そういう行動をとりそうな患者さんがいても,ずっと目を離さずに見ていられるのだと思います.
日本では,どうしても安全のためを考え,またほかに方法が見つからないときに,一時的にミトンの手袋も使うことがあるのだと思います.でもその状況が正しくインドネシア人の看護師には伝わっておらず,日本ではそういう方法を取るのだという学びをしてしまっていたことは,とても残念なことだと感じました.
看護の場面というのは,見ただけでは,なぜそうしているのか,どういう判断があったのかまでは伝わりませんので,丁寧な説明をしなければいけなかったのだと思います.
せっかく日本の進んだ看護を学びたいという高い目標を持って日本に来ている看護師さんたちです.もしみなさんが一緒に仕事をするチャンスに恵まれたときには,ぜひ,このような看護師としての考え方についても伝えていってほしいなあと願っています.
(この記事はナーシング・キャンバス2017年1月号に掲載されたものです)