お役立ち満載

国際化社会と看護

第11回
異文化の中で暮らす患者の不安

小笠原 広実 Hiromi Ogasawara

医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)

病気を繰り返さないよう ともに考える

さらに,人間の身体には防衛機能が備わっているので,多少衛生的ではない水に触れたとしても,それだけで発症はしないはずであると話し,なにか免疫力を低下させるような栄養面の乱れやストレスがないかを尋ねてみました.

 

その患者さんがとても痩せ型だったこと,そして,インドネシアでの食品の調達は,日本に比べて不便なことを考え,栄養のバランスがとれているか気になったのです.すると,食欲があまりなく少ししか食べないときも多いことや,その状態で筋力トレーニングをしていることもあると話し,腕の筋肉も見せてくれました.

 

運動をしていると聞いて,余計に水分摂取量が気になり確かめると,運動時にも口渇感があまりないということで,予想通りあまり水分を摂っていないことがわかりました.

 

そこで,普通の生活での水分必要量が1日1.5リットルといわれていること,運動するときには,のどの渇きを自覚してからでは遅いので,運動前に水分を摂る必要があることを話すと,水分摂取が不足していたことに気づいてもらえました.

 

そのあと,日々のストレスについても話してくださいました.狭い日本人社会の中で暮らさねばならない,インドネシア生活ならではの人間関係の難しさについて,納得できる話ばかりでした.

 

身体について専門知識のある看護師にとっては,当たり前のことでも,一般の患者さんには,理解できないことも多いのです.

 

また,質問に答えるだけではなく,“なぜそれを聞きたいのだろうか”という問いを持ち,生活の違いから,何を不安に思っているのかを感じ取りながら,患者さんの思いを確かめていくこと,その不安に共感しつつ,安心してもらえるような働きかけをしていくことが看護の役割ではないでしょうか.

 

そして,今後病気を繰り返さないように,生活をどのように整えていけばいいのか,患者さんとともに考えていくことが大切だと思いました.とても学びの大きな体験となりました.

 

 

 

(この記事はナーシング・キャンバス2017年2月号に掲載されたものです)