国際化社会と看護
- 第2回
- 足浴の効果と目的
小笠原 広実 Hiromi Ogasawara
医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)
足浴の目的は?
そこで,どのような看護目標で足浴をするのかを聞いてみました.すると,「清潔を保つ」「快の刺激で感情を整える」「爪の手入れをしやすくする」などは日本と同様でしたが,「血液循環を促す」「入浴したような気分を感じ,よく眠れるようにする」という目標はあがりませんでした.
そこで,看護師向けの研修会で,以下のような日本の看護学生の臨地実習事例を紹介したところ,大変興味を持たれました.
大腿骨骨折で入院が長引いて落ち込んでいた80歳代の女性に足浴をしたときに,垢がいっぱい浮くのを見て患者さんは「汚いね.こんなことさせて悪いねー」と言います.
それを聞いた看護学生は,“そうだ.垢が出ているのは,回復している証拠だと思ってもらって,元気を出してもらおう”と考え,「垢が剥がれるのを見て,とてもうれしく思っているんです」と言うと,患者さんは,「え? どうして」と驚いたように聞いてきました.
学生は「古くなっているから剥がれ落ちるんです.Aさんの細胞もどんどん替わっていくので傷が治ります.足の血液循環が高まって,体が一生懸命傷を治そうと頑張ってくれています.その証拠がこの垢なんです」と伝えました.
すると患者さんは,「そうなの.よくなるかねえ」と言って,リハビリへの意欲を取り戻しました.
これを聞いたインドネシアの看護師たちからは,“足浴の援助をとおして,患者さんの心にまで働きかけているところがすごい.インドネシアでも心への看護は重要だとわかっているけれど,なかなかここまで細やかなかかわりをしていない”との感想が聞かれました.日本の看護の大切なところを伝えられてよかったと感じた研修会でした.
医療法人偕行会の透析クリニックでは,下肢の血液循環が悪くなっている方のフットケアに,炭酸泉浴を取り入れ効果を上げています.二酸化炭素が溶けやすい温度を考えると,湯温を38℃以下にするのがよいようです.日本に研修に来たインドネシア人の医師や看護師にも体験してもらうのですが,とても気持ちよく感じていただけるようです.
異文化の中にいると,このように生活習慣や気候などによって人間の感じ方はさまざまであることに気づかされます.
(この記事はナーシング・キャンバス2016年5月号に掲載されたものです)