お役立ち満載

国際化社会と看護

第8回
宗教への配慮

小笠原 広実 Hiromi Ogasawara

医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)

患者さんの信念に耳を傾ける

海外で暮らすモスリム(イスラム教徒)の方の中には,その環境で生活をするために,かなり許容範囲を広げて生活している人もいますし,またイスラム教の特徴として,ほかの人に対しては教義を守ることを強いてはいけないということもあり,どのように教義に従うかは1人ひとりの気持ちに任されています.

 

ですから,私たちも,イスラム教だからといって,その人の食生活を狭めてしまう必要はないのですが,もし本人がその教義には従って生きていたいという方であれば,そのスピリットは大切にしてあげなければいけません.とても深い意味で,その人の意思を尊重した看護が求められています.

 

これは,イスラム教に限りません.ヒンズー教では牛肉を食べませんし,キリスト教のある宗派では,甲殻類やうろこのない魚が禁忌だったりします.まだまだ私たちの知らないものも数多いです.

 

インドネシアはイスラム教の国と思われがちですが,実はいろいろな宗教の方々が生活をしていて,だからこそほかの宗教にも寛容な国といえます.国の祝日として,イスラム教,ヒンズー教,キリスト教,仏教の大切な日はすべてお休みになっています.もちろん,宗教の違いによる紛争が起こっている地域がないわけではありませんが,とくにいろいろな人が集まる首都ジャカルタでは,本当に多くの宗教や考えの方々が調和して生きている感じを受けます.

 

日本で受け入れる側に立ったときには,まずその人の信念や思いをよく聞いて,どういう方法をとればいいか,一緒に考えていく必要があると思います.まず知って理解する,そこから看護は始まりますね.