お役立ち満載

国際化社会と看護

第9回
水の違い

小笠原 広実 Hiromi Ogasawara

医療法人 偕行会法人本部海外戦略部
公益財団法人 日本アジア医療看護育成会(研究員)

水と疾患の知識も大切

そんな状態なので,日本人の中には,インドネシアの水はとても汚いというイメージができ上がっているように思います.

 

駐在の方に多い病気の1つに,膀胱炎があります.渋滞に巻き込まれるとトイレに長時間行くことができなかったり,水分が不足したりすることが原因として挙げられます.しかしそのときに,原因として,アパートのプールが不潔だったのではないか,ジャグジーが悪いのか,自宅のお風呂に入ったのがいけないのか,などと水質の悪さを疑う人が多いようです.人間の身体には,外部の異物から体を防衛する力,免疫力が備わっていますので,汚染された水を飲むことは危険ですが,その水に入ったり触れたとしても尿道の入り口で免疫力が働き,そんなに簡単には感染を起こさないしくみがあります.膀胱炎になるときには,その免疫力が低下しているということですから,その低下した理由を,自分の生活の中から探してみるといいのではないかと思います.

 

ただ,水は要注意.普通の雑菌はともかく,A型肝炎ウイルスが経口で入ってきたり,庭に水がたまっていたりすると蚊が発生し,蚊が媒介する病気にかかる危険も高まります.有名なのはデング熱です.

 

汚染された水を飲まない,汚い水をためないなどの予防策は取りつつ,まずは自分の免疫力を低下させないような生活を心がける必要があります.日本ではそれほど意識していなかったかもしれないのですが,海外で生活するときには,余計にそういった知識が必要になるのだと思います.

 

 

(この記事はナーシング・キャンバス2016年12月号に掲載されたものです)