サイボーグ父さんの『患者道』
- 第1回
- 心室頻拍の再発
サイボーグ父さん(60代,会社員)です.
患者目線で,現在の高度な医療を体験して感じたことをお伝えしていきます.
痛いので一瞬眠ってもらいます
病院に着くと1階の救急救命センターにストレッチャーで運び込まれる.1人の医師が問診をする傍らで,また別の医師が点滴の管を腕にさす.このほか血圧を測る看護師などあっという間に10人近い医師,看護師,技師がストレッチャーのまわりを忙しく動き回る.
「薬が効かないので電気ショックをかけます.痛いので一瞬眠ってもらいます」
医師が告げる.点滴に混ぜた薬では心室頻拍が止まらなかったようだ.2年前は止まったのに.言われた方はというと,どうしようもない.まさしく「まな板の上の鯉」状態.麻酔注射を打つのかと思ったら,再び点滴になにやら薬品を加えていた.と思ったくらいでふっと意識が飛ぶ.次に目が覚めると,というよりも眠っていたという実感もないまま,息苦しさは収まっていた.いつの間にか主治医の先生がかけつけたようだ.思わず
「すみません.また来てしまいました」
患者が「謝る」というのも変だが,なんとも情けない気持ちがそんな言葉になった.主治医は「前とは違う場所から心室頻拍が起きています.」と表情を曇らせる.
周りは片づけをはじめ,潮が引くように次々と姿を消す.医師と看護師に付き添われてストレッチャーで2階の病室に運ばれる.2階は中心に医師と看護師の詰め所があって,それを個室の病室が取り囲んでいる.各病室にはカメラと血圧や心拍数を測定する機械などがあり,医師も看護師も詰め所でモニター画面をみれば,各患者の状態が一目でわかるようになっている.なにせこちらは,体に点滴,心電図,排尿などの管を装着したスパゲッティー症候群.データはすべて持ってかれる.このほか一般の病棟と比べ,看護師と患者の割合が全く違う.ここはほぼマンツーマン.一般の病棟は1人の看護師が10人以上の患者を担当することもある.